「背筋を伸ばして座りなさい」と言われて育った方は多いと思います。確かに前傾姿勢や猫背は身体に負担をかけます。しかし、意識して背筋を伸ばし続けるだけでは根本的な解決にならないことがあります。
なぜか。「正しい姿勢」を維持するには、それを支える筋肉が必要です。骨盤の前後のバランスを保つ腸腰筋、背骨を支える多裂筋、肩甲骨を安定させる菱形筋・前鋸筋——これらが適切に機能していなければ、意識的に「伸ばす」ことで別の場所に余計な力が入り、また別の問題を生むことがあります。
つまり、「姿勢を変える」のではなく、「正しい姿勢を自然に保てる身体をつくる」ことが本質です。
長時間の前傾姿勢で、背中の中部(胸椎)が固まります。胸椎が動かなくなると、首や腰がその分を代わりに動こうとするため、頸部痛・腰痛につながります。
股関節を曲げた状態(座位)で長時間過ごすと、股関節の前側の筋肉(腸腰筋)が縮んだまま固まります。立ち上がっても骨盤が前に引っ張られ、反り腰になりやすくなります。これが慢性的な腰痛の原因になります。
キーボードを打ち続ける姿勢では、肩甲骨が肋骨の上を前方へ滑っていきます。これが肩まわりの筋肉を引き伸ばした状態で緊張させ、肩こり・首の痛み・場合によっては腕のしびれにつながります。
施術では「どこが硬いか」よりも「なぜそこが硬くなったのか」を大切にしています。デスクワーカーの方には、仕事中の姿勢・モニターの位置・椅子との関係なども確認しながら、身体の状態を評価します。施術後には、職場で実践できるセルフケアや、短時間でできるリセット方法もお伝えします。
完全なセルフケアは施術と合わせて行うのが理想ですが、日常の中で意識できることもあります。
これらは「治す」ものではなく、固まりきる前にこまめにリセットするためのものです。