「てぃーぐすい」は、沖縄の言葉で「手の薬」を意味します。「てぃー」が手、「ぐすい」が薬。手が薬になる、というのは少し詩的な表現に聞こえるかもしれません。けれど、私自身が施術者としてこの仕事を続けるなかで、これ以上ふさわしい言葉はないと感じています。
機械を当てるだけでも、決まった手順をなぞるだけでもない。その方の身体に手で触れ、何が起きているかを感じ取り、必要なところに必要な働きかけをする——その積み重ねで身体は変わっていきます。沖縄には古くから「手の力」を信じる文化があり、その土地で生まれ育った私にとって、「てぃーぐすい」という名前は自然に出てきたものでした。
ただ、名前を付けることと、それを体現することは別です。「手の薬」を名乗る以上、その名前に恥じない仕事をする——それが、私が10年前にこの院を独立して開いたときに、自分自身と交わした約束でした。
てぃーぐすいに来られる方には、ある共通点があります。それは、すでにいろいろな場所をまわってきているということ。
整形外科で「異常なし」と言われた方。整骨院に何十回通っても変わらなかった方。「もう年齢のせいだから仕方ない」と言われた方。リハビリの期限が切れて「ここまでです」と告げられた方。共通しているのは、どこかで「もう無理かもしれない」と思いかけているということです。
私が大切にしているのは、その「無理かもしれない」を、もう一度ひっくり返して考えてみることです。本当にもう無理なのか。本当に手はないのか。——身体は、思っているよりもずっと変わる余地を残しています。年齢を重ねた方の身体であっても、長く不調が続いている方の身体であっても、変化の可能性はゼロではありません。
「諦めない」とは、根拠のない楽観論ではありません。身体の構造、動作の癖、生活習慣——それらをひとつずつ丁寧に見ていけば、まだできることが残されていることが多い。だからこそ、てぃーぐすいは「もう仕方ない」と言わず、まずはその方の身体に向き合うところから始めます。
「向き合う」というのは、抽象的な言葉に聞こえるかもしれません。けれど、施術の現場では非常に具体的な意味を持ちます。
「腰が痛い」という訴えの裏には、いつから、どんなときに、何をしているときに、どこまで痛いのか——たくさんの情報があります。短時間で結論を出すのではなく、その方が話したいことをきちんと聞き切る。そこから初めて、評価が始まります。
痛いところだけを見るのではなく、立ち方、歩き方、座り方、呼吸の仕方まで観察します。膝の痛みの原因が股関節にあったり、腰の痛みの原因が足首にあったりすることは、決して珍しくありません。
施術中も、何をしているのか、なぜそこを触っているのかを、できるだけ言葉でお伝えします。ご自分の身体に何が起きているかを理解できることが、変化を長持ちさせる土台になるからです。
「向き合う」とは、その方の身体を、その方自身と一緒に理解しようとする姿勢のこと。施術者だけが分かっていても意味がありません。お互いに「ここが原因かもしれない」と納得して進めていく——それが、てぃーぐすいの90分の中で起きていることです。
私は国家資格を持つ専門家として、長年、病院や施設でも経験を積んできました。そこで強く感じたのは、制度の中ではどうしても「できることに限界がある」という現実です。
保険診療には、時間の制約、回数の制約、扱える内容の制約があります。それは制度として必要な仕組みですが、「その方にとって本当に必要なこと」がそこに収まりきらないこともまた事実です。15分や20分の枠の中では、丁寧な評価も、その方に合わせた施術も、生活への落とし込みも、十分にはできません。
私が独立を決めたのは、「制約のない場所で、本当に必要なことをやりたい」と思ったからです。自費診療という形は、決して特別なサービスを売るためではなく、必要な時間と内容をきちんと提供するための選択でした。90分という時間も、完全マンツーマンという形も、すべてその延長線上にあります。
これらすべてが、制約から離れた場所だからこそ実現できることです。
てぃーぐすいには、もう一つ大切にしている姿勢があります。それは、「1回の施術で、できる限りの変化を出すことを全力で追求する」ということです。
「何回も通ってもらえば、そのうち良くなりますよ」という考え方を、私は採りません。もちろん身体の状態によっては、継続が変化を支えることもあります。けれど、それは「1回目に全力を尽くしたうえで、必要であれば」という順番であるべきだと考えています。
1回目から手を抜かない。次回の予約を前提にしない。「今日この90分で、できる限りのことをする」——その姿勢が、結果的に「もう一度来てみたい」と思っていただけることにつながると信じています。継続するかどうかは、変化を体感したご本人が決めることです。
「次もある」が前提だと、目の前の1回が薄くなる。てぃーぐすいは、その逆を選びました。「今日が最後かもしれない」と思うくらいの真剣さで、毎回の90分に向き合う。それが、私が国家資格を持つ専門家として、そして10年間ここで仕事を続けてきた人間として、できる最も誠実な仕事の形だと考えています。
てぃーぐすいを選んでくださる方の多くは、何かに困っている方です。痛みであったり、不調であったり、競技復帰への不安であったり、経営や仕事のパフォーマンスへの危機感であったり——理由はさまざまですが、共通しているのは「今のままではいけない」と感じていることです。
そんな方に、私たちがお約束できることは、ひとつです。あなたの身体に正直に向き合い、できる限りのことを全力で行う——それだけです。劇的な結果を保証することはできません。けれど、「ここまでやれることがあったのか」という変化を感じていただけるよう、毎回の90分を組み立てています。
もし今、あなたが「もう仕方ないのかもしれない」と感じているなら、その前に一度、お話を聞かせてください。話だけでも構いません。私たちにできることがあるのか、ないのか——それを判断するためにも、まずはお会いするところから始めさせてください。